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借地権の相続

借地権の相続

 父が亡くなり、故郷で父が一人で住んでいた家と借地権を相続することになりました。地主には名義書換料を支払わなくてはいけませんか?都内に住んでいる私は、10年以内には故郷に戻りたいのですが、それまで家を人に貸すことに地主の承諾は必要ですか?また、貸した家を確実に明け渡してもらうことはできますか?

回答

回答者: 弁護士 井上 幸夫


■ 相続の名義書換料は支払う必要はない
 借地権を第三者へ譲渡する場合の地主の譲渡承諾料(一般的なケースでは借地権価格の10%程度)は、俗に名義書換料ともいわれています。借地権を譲渡する場合は、事前に地主の承諾(もし承諾を得られない場合は裁判所の許可)を得て譲渡することが必要です。一方、相続による取得は、第三者への譲渡に当たりませんので、譲渡承諾料を支払う義務はありません。賃貸借契約書を書き換える義務もありません。賃借人を明確にするために相続した人の名前での契約書を作成することもありますが、その場合でも、名義書換料を支払う必要はありません。

■ 借地上の建物を人に貸すのに地主の承諾は不要
 建物を人に譲渡する場合は、借地権の譲渡や土地の転貸に当たるので地主の承諾が必要です。一方、建物を人に賃貸する場合は、敷地も貸しているのではと素朴には思えますが、借地権の譲渡や土地の転貸には法律上は当たりませんので、地主の承諾を得る必要はありません。なお、契約書に、建物の賃貸を禁止する特約条項がある場合は、注意が必要です。地主がこの特約条項違反で契約解除しても無効とする裁判例もありますが、建物を賃貸する前に弁護士に相談しましょう。

■ 建物を確定期限付きで賃貸することはできる
 普通の建物賃貸借契約では、賃貸借期間を定めても、契約更新しないことに正当な事由があると認められなければ、契約は更新されたものとみなされます。一方、契約更新はなく、期間の満了により賃貸借は終了する定期建物賃貸借契約を締結することもできます。この場合、①契約書にそのことを書くことに加えて、②契約書とは別の書面を賃貸人が賃借人に対しあらかじめ交付して説明することが必要です。②を証拠によって明らかにできないと、裁判では、普通の建物賃貸借契約とされて、契約は更新されると判断されます。仲介業者が作成する重要事項説明書は、②の書面に当たりません。このため、その点をきちんと処理できる仲介業者を選ぶことが必要ですし、仲介業者まかせにしてはいけません。心配なときは、弁護士に相談しましょう。

(2020年4月記)

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