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「相続」が「争続」にならないために・・・
遺言書のつくり方

「相続」が「争続」にならないために・・・遺言書のつくり方

妻はもう亡くなっており、相続人は娘と息子の2人です。子供たちは仲がいいし、遺言を書いておくべきかどうか迷っています。財産は私名義の土地建物(時価4000万円。ここに娘夫婦と同居しています)のほか、預金2000万円、有価証券1000万円です。長男は自分で住まいを購入してローンを支払っています。遺言書を作った方がよいでしょうか。作るとしたらどんな点に注意したらいいでしょうか。

回答

回答者: 弁護士 小林 譲二


あなたが亡くなった後、娘さんが引き続き土地建物に居住を望むと、住宅ローンが残っている息子さんには不満が残る可能性がありますので、遺言書を残すことをお勧めします。

作りかたは自筆証書と公正証書の2つが普通です。
自筆証書遺言は全文と日付、名前を自筆で書いて押印します(訂正のしかたは難しいので訂正のないよう書き直すことをお勧めします)。自筆証書遺言は簡単で費用もかかりませんが、原則として、遺言者が亡くなったときに家庭裁判所で「検認」の手続が必要です。
高齢の場合遺言を作るとき認知症でなかったか、など争いになる可能性もあります。
なお、2020年7月10日から施行された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により、遺言者は作成した自筆証書遺言を法務局で保管できるようになり、この場合には家庭裁判所での検認は不要となりました。

公正証書遺言は公証役場で公証人に作成してもらいますので信用性が高く、検認手続も必要ありませんが、証人2人を用意する必要があり、また一定の費用がかかります。

ただ、遺言書があっても相続人には法定相続分の2分の1(親や祖父母だけが相続人の場合は3分の1)を確保する権利があり、これを遺留分といいます(民法1042条 ただし、遺言者の兄弟姉妹や甥姪には遺留分はありません)。遺留分が侵害されたことを知った相続人は1年以内に減殺請求(2020年4月1日以降の相続については遺留分侵害額請求)をすることが出来ます。

遺言書を作って逆に紛争になっては意味がありませんので、たとえば娘さんに不動産を相続させるけれども、預金や有価証券は息子さんに相続させることにしたらどうでしょうか。その場合、息子さんは1千万円少なくなりますが、遺留分(7千万円の4分の1である1750万円)は侵害しません。息子さんは現金をローン返済にまわせるので不満は少ないのではないでしょうか。

どのような遺言にしたら正確で紛争の予防をはかれるか、相続税を少なくできるかなどを事前に弁護士とよく相談した上で作成されることをお勧めします。なお、遺言はいつでも取り消したり、作り直すことが出来ます。

(2008年10月記) (2021年6月民法改正により修正)

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