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初の日弁連主催!労働法制の規制緩和は「おかしい」と声を上げた市民集会

憲法紙芝居

 
弁護士 山添 拓

2013年12月13日、日本弁護士連合会(日弁連)の主催で、「労働法制の規制緩和と貧困問題を考える市民大集会」が日比谷野外音楽堂で開かれました。手足がかじかむ冬空の下、午後6時から始まった集会には、2000人の市民・労働者が参加しました。当事務所からも、日弁連の貧困問題対策本部副本部長・滝沢香弁護士、日本労働弁護団の事務局長・菅俊治弁護士をはじめ、多数の弁護士・事務局員が駆けつけました。
集会の冒頭、日弁連会長の山岸憲司弁護士は、日弁連が労働法制や貧困問題を正面から扱う集会を日比谷で開くのは初めてのことと発言すると、近くに座る人からも「おおっ」という声が。かつてない労働法制の規制緩和に、それだけ危機感が強まっていることの現れであると述べていました。
労働法学者の西谷敏・大阪市立大学名誉教授は、「昨今の規制緩和に我慢できず奈良から出てきた」「50年学者をやってきて、現在ほど危機的な時はない」と指摘。解雇規制の緩和や、いわゆる残業代ゼロのホワイトカラーエグゼンプション、派遣法の大改悪、有期雇用の5年ルールの骨抜き、ジョブ型正社員の問題点など、規制緩和の議論に共通するのは、「経済成長」や「国際競争力」が重要であり、規制は「障害」としか見ていないことだと強調されました。その上で、政府が短期間に結論を急ごうとするのは、反対運動の高まりを恐れているからだ、民主主義の空洞化が進んでいるという指摘は、あれだけの批判的世論のなか特定秘密保護法を無理矢理成立させた国会の状況を併せて考えるとき、改めて危機感を覚えるものでした。
元新聞記者の竹信三恵子・和光大学教授は、12月に出された厚生労働省の審議会が示した「骨子案」が、何年でも、ほとんどの業種で派遣を使い続けることを提唱していると紹介し、骨子案に書き込まれた「臨時的・一時的」という表現は「悪い冗談だ」と一蹴しました。
マツダ・派遣切り裁判で、山口地裁で勝訴判決を勝ち取った原告の発言は、重みがありました。リーマンショック後の2009年に派遣切りされた時は、「自己責任」と言われたこともあった、職と住まいを失い、持病を悪化させた人、自動車での生活を余儀なくされ夫婦の食事は1日に6枚入りの食パンだけという生活だったという人・・・派遣法の改悪は、山口地裁判決の意義をも失わせるもの。安心して働き、生活できる世の中をつくろうという呼びかけが響きました。
その後も当事者として事件をたたかっている労働者・組合の発言が続き、団体あいさつでは連合、全建総連、全港湾、全労連、全労協、NPOの「もやい」、シングルマザーズフォーラムなど、多彩な立場から発言がありました。日弁連主催という枠組みならではの顔ぶれです。多くの方の発言に共通していたのは、派遣法改悪が派遣労働者の固定化、環境悪化につながるという点です。「常用代替禁止」と言いながらいまでも不十分な規制であり、同一労働同一賃金は実現していません。むしろ規制の強化こそが必要だという訴えには、労働運動の潮流を超えて、労働法制の規制緩和を許さない運動にも、一致して取り組む姿勢が試されているように感じました。
集会後は、「安倍政権の雇用破壊に反対する12.13銀座デモ実行委員会」によるデモ隊が出発。東京駅までのデモは、沿道からも大いに注目されました。
非正規雇用が40%近くに達する一方、長時間労働による過労死が増加の一途をたどる現状では、安心して働くという当たり前の権利が脅かされています。労働に根ざした人々の生活が保障されないなかでの「経済成長」はあり得ないでしょう。安倍首相が進める労働法制の規制改革に断固反対しつつ、あるべき労働規制の在り方をきちんと示していくことが求められていると思いました。




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