遺産分割の内容に納得できないのですが…
先日、父が亡くなりました。相続人は私と兄のみ。死亡時の父の財産は預金3000万円。しかし、十数年前、父は兄に当時の時価5000万円の土地(現在の時価は6000万円)を与えました。兄は預金を半分ずつ分けて遺産分割を終了と言いますが納得できません。 (新宿区 Aさん)
回答者: 弁護士 坂本 雅弥
生前に贈与された財産も遺産に含まれます
(2013年7月記)
- ■遺産は預金と土地の合計
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遺産を分けるためには、まずお父さんの遺産の範囲を明らかにする必要があります。お父さんが亡くなった時に有していた預金3000万円が遺産であることは明らかです。しかし、相続人間の公平をはかるため、亡くなった方が、生前、相続人に対して、ある程度高額な財産を贈与した場合(生前贈与)には、その財産も遺産に加えます。
本件では、亡くなったお父さんの預金3000万円のほか、お父さんがお兄さんに生前贈与した本件土地も遺産に加えます。 - ■相続時の価値で財産を評価
- 生前贈与された財産を遺産として評価する時点は、生前贈与時ではなく、相続開始時です。そのため、本件土地については、相続開始時の時価である6000万円と評価します。したがって、お父さんの遺産として計算する金額は、預金3000万円と土地6000万円を合計した9000万円です。
- ■相続分を超えた生前贈与は?
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兄弟間の相続分は均等ですので、Aさんとお兄さんの具体的な相続分額は9000万円を2分の1ずつに分けた4500万円です。ただし、お兄さんはお父さんの生前に時価6000万円の本件土地を取得しているため、お兄さんについてはすでに相続分を全て取得したものと考えます。そのため、お兄さんは預金を相続することはできません。お父さんの預金3000万円はAさんが全て取得します。
なお、本件土地の時価は6000万円なので、お兄さんは相続分より1500万円多くの財産を取得したことになりますが、Aさんはお兄さんに対して、相続分を超えた1500万円を請求することはできません。 - ■相続問題は弁護士にご相談を
- 相続の問題は、複雑な法律問題が生じることもあるので、弁護士に相談して解決することをお勧めします。当法律事務所では、平日の午前及び午後、土曜日の午前及び午後に法律相談を実施しておりますので、お気軽にご相談下さい。
(2013年7月記)
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