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遺産分割協議後の共有物分割

遺産分割協議後の共有物分割

土地とビルを姉妹二人で相続し、遺産分割協議で持分2分の1の共有名義にしました。ビルは4階建で、1・2階は他人に賃貸しており、3・4階は居住用で、1・2階と3・4階で区分所有登記となっています。3・4階は姉の私が事務所として使用しており、使用料の代わりにビルの管理は私が行い、固定資産税と修理費用などを引いた1・2階の賃料の2分の1を妹に送っています。
ところが妹は私の持分を買い取ってもいいから土地建物を単独で利用したいと言い出しています。どうしたらいいでしょうか。

回答

回答者: 弁護士 小林 譲二

民法の原則
まず、この土地建物は二人の共有名義となっていますが、現行の民法では単独所有が原則で、共有は例外とされ、いつでも分割して単独所有にできることになっています。共有物分割のためには、まず当事者間で協議することが必要です。もしあなたが共有持分を適正価格で譲渡してもいいと考えれば、「持分の売買の方法」をとればいいので問題は生じません。
一般には協議で決まることが多いと思いますが、共有者間の協議が整わないときには、共有者は裁判所に分割を請求することになります。その場合、裁判所は、まず(1)現物分割が可能な場合には、現物で分割するよう命じ、(2)物理的に現物分割が不可能な場合や、分割すると価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売を命ずることができるとされています。

代償分割
民法が明文で認めている分割方法はこの二つだけですが、相続による遺産分割の場合は、家事審判規則によって「全面的価格賠償の性質をもつ代償分割」が認められており、共同相続人の一人が価格賠償の方法で不動産を単独で取得することができます。この方法は遺産分割の現実的な方法の一つとして定着しています。本件のように遺産分割協議により共有名義としている不動産は相当数に上ると思いますが、この場合に、裁判になって現物分割か競売しかできないとすると、特に土地が狭い都市部ではいろいろな弊害が出てしまいます。

全面的価格賠償
そこで最高裁判所は、通常の共有の場合でも明文の規定はなくとも以下の要件があれば「全面的価格賠償」の方法が可能との判断をしています。(1)共有物の性質・形状・共有関係の発生原因などを総合的に考慮して特定の共有者に取得させることが相当である場合、(2)共有物の価格が適正に評価されていること、(3)当該共有物を取得する者に賠償金の支払能力があることです。
本件では、裁判所は現物分割を命ずることも不可能ではありません。一般には土地は分筆が可能ですが、土地上に建物が建っている場合には、建物が区分所有を認められない限りは分割不可能とされています。本件ではビルは既に区分所有建物として登記されているからです。
しかしそれでは同じ土地・ビルは二人姉妹の「共有」から「単独所有」に変わったものの、共有部分は共有のままであり、ビル管理をめぐって区分所有者の意思を考慮しなければならないという点では、分割前とあまり変わりありません。
ですから、妹さんだけでなく、あなたの側でも、(1)不動産の適正価格の証明、(2)自分の支払能力を証明して、土地建物を単独で取得する価格賠償の方法をとることも十分に検討すべきだと思います。

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