交通事故賠償金の計算方法
私は専業主婦ですが、買い物途中、自動車にはねられました。右肩を骨折し、1年ほど、入通院を繰り返しましたが、痛みがとれず、保険会社の担当者の勧めに従って後遺障害認定手続をしたところ、12級と認定されました。しかし、保険会社から提案された賠償金があまりに低くて驚いています。こんなものなのでしょうか。
回答者: 弁護士 君和田 伸仁
交通事故にあったときに、加害者に請求できるのは、
- 1.治療費、通院交通費などの実費
- 2.仕事を休んだ場合の休業補償
- 3.精神的、肉体的な苦痛に対する慰謝料
また、後遺障害が残った場合には、1.〜3.に加えて
- 4.労働能力低下に伴う将来の減収分の補償である逸失利益
- 5.後遺症が残ったことに対する慰謝料
加害者が任意保険に加入している場合、これら賠償額についての交渉は、保険会社の担当者と行うことになります。但し、保険会社が提示してくる金額は、裁判をやった場合に認められる金額より低いのが一般的です。
例えば裁判では、専業主婦の休業補償(1.)や逸失利益(2.)は、賃金センサスという統計資料に基づく金額(1日9500円程度)によって計算されます。しかし、保険会社からの提案では、自賠責保険の基準(1日5700円)をもとに計算してくるのが通常です。
また、保険会社が提示する慰謝料額(3.5.)は、裁判で認められる金額を常に下回ります。ですから、示談をする前に弁護士に相談されることをお勧めします。弁護士に委任して交渉すると、保険会社は、裁判で認められる金額を払ってくることが少なくありません。
さらに、「過失相殺」にも気をつける必要があります。これは、被害者にも一定の落ち度(過失)がある場合に、その分、賠償額を減額するものです。交通事故の場合、過失の割合は、ある程度基準化されていますが、保険会社が自分に有利な主張をしてくる場合もあり、要注意です。
なお、最近では、「人身傷害保険(特約)」が普及しています。これは、被害者やその家族が加入している自動車保険の保険会社が、過失分の減額をしないで保険金を支払うものです。但し、支払われる金額は、裁判をしたときの金額よりも低く設定されていますので、この保険を使う場合でも、加害者に対する請求をあわせて行う必要があります。
この人身傷害保険と加害者に対する賠償請求の関係は複雑ですので、この保険を使う場合にも、弁護士に相談するのがよいでしょう。
(2009年5月記)
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