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2017年のニュース

事件紹介

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で勝訴判決(青龍美和子弁護士

2017年10月10日、福島地方裁判所で、2011年3月の福島原発事故について国と東京電力の法的責任を認め、賠償の範囲を広げる勝訴判決が言い渡されました。
この事件は、2013年3月11日に提訴された「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(通称「生業訴訟」)です。
当事務所の青龍美和子弁護士が弁護団に参加しています。
今回の福島地裁の判決は、本年3月の前橋地裁、本年9月の千葉地裁に続き、福島原発事故の被害救済を求めた裁判についての3例目の判決です。
生業訴訟は、原告総勢約4000名の全国最大規模の集団訴訟となっており、今回の判決は原発事故被害救済制度や原発政策のあり方にも大きな影響を与えます。
来年3月には、東京地裁、京都地裁、福島地裁いわき支部(笹山尚人弁護士、岸朋弘弁護士、川口智也弁護士が弁護団に参加)でも同様の事件について判決が言い渡される予定です。
福島原発事故による被害の全面救済、二度と原発事故を起こさないために、引き続き頑張ります。

原告団・弁護団の声明を紹介します。

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟判決を受けての声明


    本日、福島地方裁判所(裁判長金澤秀樹)は、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の判決(以下、「判決」という。)を言い渡した。

    1 国の法的責任と東京電力の過失
    判決は、本年3月17日言渡の前橋地裁判決に続き、国の法的責任と東京電力の過失を認め、断罪した。
    判決は、
    i 国が2002年の地震本部「長期評価」等の知見に基づき、2002年末までに詳細な津波浸水予測計算をすべきであったのにこれを怠ったこと(予見義務)。
    ii 予測計算をすれば、福島第一原子力発電所の主要施設の敷地高さを超える津波が襲来し、全交流電源喪失に至る可能性を認識できたこと(予見可能性)。
    iii 非常用電源設備等は「長期評価」から想定される津波に対する安全性を欠き、技術基準省令62号4条1項の技術基準に適合しない状態となっていたこと(回避義務)。
    iV 2002年末までに国が規制権限を行使し、東京電力に適切な津波防護対策をとらせていれば、本件津波による全交流電源喪失を防げたこと(回避可能性)。 をいずれも認めた。また、必要な津波対策をとらなかった東京電力についても過失があったと認めた。
    本日の判決は、安全よりも経済的利益を優先する「安全神話」に浸ってきた原子力行政と東京電力の怠りを法的に違法としたものであり、憲法で保障された生命・健康そして生存の基盤としての財産と環境の価値を実現する司法の役割を果たすものとして、今後の司法判断の方向を指し示すものと評価される。

    2 被害救済の範囲と水準
    判決は、被告らの「年間20ミリシーベルトを下回る被ばくであれば健康リスクは極めて小さい」「原告らの被害は、科学的根拠のない危惧不安のたぐいにすぎない」などの主張について、放射性物質による居住地の汚染が社会通念上受忍すべき限度を超えた平穏生活権侵害となるか否かは、「低線量被曝に関する知見等や社会心理学的知見等を広く参照したうえで決するべき」との理由で退けた。
    その上で、判決は、平穏生活権侵害による慰謝料について、本件原告3824名のうち、2907名の請求を認め、原賠審の中間指針等に基づく賠償対象地域よりも広い地域について賠償の対象とし、かつ既払の賠償金に対する上積みを認めた。
    しかし、避難者原告のうち帰還が困難となった原告らが求めていた「ふるさと喪失慰謝料」については、実質的にこれを認めなかった。
    原告らが居住していた全ての地域について救済対象とする判断ではなく、また上積みの額についても原告らが求めていた水準に達していない地域もあり、その点は極めて不十分である。判決は、権利侵害性の判断枠組みについては国や東京電力の被害隠しの主張を明確に退けたものの、実際の損害認定については、現地検証、原告本人尋問等で明らかにしてきた原告らの被害実態を正しく反映したとは到底評価しがたい。
    しかし、原告ら被害者に対する権利侵害を認めて、賠償の対象地域の拡大や賠償水準の上積みを認めた点は、原告らのみにとどまらず広く被害者の救済を図るという意味においては一歩前進と評価することができる。

    3 原状回復請求について
    原告らが求めた原状回復請求については、判決は「本件事故前の状態に戻してほしいとの原告らの切実な思いに基づく請求であって、心情的には理解できる」と理解を示しつつ、「求める作為の内容が特定されていないものであって、不適法である」として、これを棄却した。 この点は非常に残念であると言わざるを得ないが、現在の裁判実務において、作為内容を具体的に特定しない作為請求が認められることは技術的に困難な部分があり、現在のわが国の司法判断の限界を示しているとも言える。原告らは、今後も、「もとどおりの地域を返せ」という被害者の正当な要求を実現するため、迅速かつ実効的な原状回復を求めて法廷内外で奮闘していく。

    4 訴訟団の原点とたたかい
    私たち生業訴訟団は、次の要求の実現を求めている。
     二度と原発事故の惨禍を繰り返すことのないよう、事故惹起についての責任を自ら認め謝罪すること。
     中間指針等が最低限の賠償を認めたものにすぎないという原点に立ち、中間指針等に基づく賠償を見直し、強制避難、区域外(自主的)避難、滞在者など全ての被害者に対して、被害の実態に応じた十分な賠償を行うこと。
     被害者の生活・生業の再建、地域環境の回復及び健康被害の発生を防ぐ施策のすみやかな具体化と実施をすること。
     金銭による損害賠償では回復することができない被害をもたらす原発の稼働の停止と廃炉。
    原告団・弁護団は、本日の判決を力にして、これら4つの要求の実現に活かす活動に踏み出す。そして、全国各地で進められている原発事故被害者の方々の集団訴訟において、各地の裁判所が正義の判断を示すことを心から希望する。またその実現のために、引き続き、全国の原告・弁護団・支援の方々とともに闘う決意である。


以上

2017年10月10日

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団
同   弁護団

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