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ブルームバーグPIP解雇事件、東京高裁でも勝訴

通信社ブルームバーグの記者が、PIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン:業績改善プラン)と呼ばれる過大なノルマを課された上に「能力不足」を理由として解雇された事件で、東京高等裁判所は、解雇無効とした地裁の判断を維持しました。
以下に、声明を紹介します。担当弁護士は、今泉義竜、小木和男、菅俊治です

ブルームバーグPIP解雇事件・東京高裁判決についての声明

  • 東京高等裁判所第20民事部(坂井満裁判長)は、2013年4月24日、ブルームバーグPIP解雇事件の裁判において、会社側の控訴を棄却する判決を出した。本件は、2005年11月に通信社ブルームバーグに記者として中途採用された原告(被控訴人)が、2009年12月から2010年3月にかけて会社からPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン:業績改善プラン)を実施された後、能力不足を口実に解雇されたことから、会社を相手どり、解雇は無効であるとして従業員としての地位の確認を求め、2012年10月5日に、一審東京地裁が解雇無効の判決を出していた事件である。
  • 高裁判決は、原審より進んで、原告が会社の管理システムに行動予定を書き込んでいたことや原告が執筆した記事本数は同僚と遜色がないことなど、会社の主張する解雇理由が成り立たないことを補強して認定した。さらに、会社が提出した、氏名不詳の14名の従業員の資料については、原告が反証不能な書証であり信用できないなどとし、原告の職務能力の重大な低下を示す客観的証拠はないと断言した。
    また、控訴審において会社が「国際企業と一般的な日本企業との雇用形態には差異がある」として、外資系企業について解雇権濫用法理をゆるやかに適用すべき旨を主張していた点については、「単なる一般論に過ぎず」「解雇事由の判断に影響を与えるようなものではない」と一蹴した。
    なお、会社は、原告が会社側の提案した備品管理などの業務での復職に応じないことを理由として、高裁結審後の和解協議中の本年3月1日、改めて解雇通告をした。違法に違法を重ねて恥じない会社の姿勢は、自らの存立を危うくするものであることを知るべきである。
  • 本判決は、解雇の規制緩和や大企業による退職強要が横行し、労働者の雇用環境が悪化しつつある中で貴重な判決である。
    とりわけ今、政府の産業競争力会議や規制改革会議において、首切り自由の「限定正社員制度」や違法解雇を手切れ金で解決する「解雇の金銭解決制度」の導入が検討されている。 上記会議の構成員である経済学者や大企業経営者は、日本の正社員が過度に雇用保障されていることが、産業の発展を阻害していることを議論の前提としている。しかし、それは実態とかけはなれた机上の議論である。
    現場では、本件のように、「業績改善」に名を借りた退職強要・違法解雇が横行している。訴訟などで闘える労働者はごく一部に留まり、圧倒的多数の労働者が権利を守られることなく泣き寝入りしているのが実態である。
    今、必要なのは、解雇自由の弱肉強食社会の実現ではない。労働者が、自らの労働にふさわしい対価と十分な休息を享受し、安心して働き続けられる社会の実現である。
    そのために、労働者が長年にわたる闘いで勝ち取った解雇権濫用法理(労働契約法16条)をはじめとする労働者保護法制を実効化し、さらに強化していくことこそが必要である。
    私たちは、労働者の権利を擁護し、健全な社会の発展のために引き続き奮闘する決意である。

2013年4月24日

日本新聞労働組合連合
新聞通信合同ユニオン
弁護団弁護士 今泉義竜/小木和男/菅俊治



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