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井上幸夫弁護士に聞く労働者派遣法の歴史雇用の大原則を壊す最大の改悪」が労働情報880号(2014年2月1日)に掲載されました。

井上幸夫弁護士のインタビュー記事「労働者派遣法の歴史雇用の大原則を壊す最大の改悪」が労働情報880号(2014年2月1日)に掲載されました。
その抜粋です。

龍井−今回の派遣法改悪は、「常用代替防止の空洞化」など、様々な問題が指摘されていますが、なぜこうなってきたのか、歴史をさかのぼらないと本質が理解できず、有効な闘い方が困難になると思います。したがって、過去の経緯に詳しい井上さんにぜひお話しいただきたい。井上さんが最も問題としているのは、どの点ですか。
井上最大の問題は、「派遣期間上限3年」をはずし「無期限」としようとしていることです。派遣を「例外的・一時的」とするのではなく、常態化させようとしている。その結果、正社員でもなく契約社員のような直接雇用でもなく、間接雇用の派遣にどんどん置き換えられる。「直接雇用」という雇用の大原則を180度変えてしまうことです。

龍井−他の労働規制緩和と比べても、一番危ないかもしれませんね。
井上派遣法が制定されたのは1985年で、約30年経過し、次々に改訂されてきましたが、今回が最大の改悪です。本来、派遣労働というのは「例外的な雇用」として成立しましたが、まさにその全てを変えようとしています。
……

井上労働者派遣事業は、法律的には労働者供給事業でしたが、職安法44条で禁止されていました。もともとは「中間搾取」や「強制労働」などの弊害を除去するというのがその大きな理由でしたが、「直接雇用=使用する者が雇用者であること」という雇用の大原則を確保する意味もありました。また、ILO100号条約や111号条約の同一価値労働同一報酬原則などによる「公正な労働基準」からも禁止すべきものです。派遣労働の場合は、中間に業者が入り、業者の利益が中間搾取(ピンはね)されて同じ仕事をしても賃金は低くなりますから、同一報酬原則に反し「公正な労働基準」に逆行する結果になります。
……

井上原案段階はたしか4業種しかなかったぐらい、極めて例外的なものとしてスタートしたはずです。しかしファイリング業務なども含まれるなかで「高度な専門職」ではない業務がどんどん拡大されてしまいました。それでも、1998年「改正」で派遣業務が原則解禁された時でも、かろうじて「臨時的・一時的業務」に限定されるという位置づけで、派遣期間上限は1年(その後3年)とされ、業務的には拡がっても、派遣は「臨時的・一時的」の原則は建前として確保されてきました。「常用代替防止」も、「常用の直接雇用」の代替防止でした。今回の改悪はそれらを全部ひっくり返してしまいます。派遣を「無期限」とすることにより、労働者を使用する者が雇用主となるという「直接雇用」原則が否定されます。労働者を使用する者が労働法上の責任を負わずにいつでも雇用を打ち切れる「間接雇用」への代替を急速に促進するものです。
……

井上同時に、労働者を使う方も、これまでは雇用の調整弁として直接雇用の臨時工(製造業など)や契約社員を利用してきましたが、派遣業務が拡大されることにより、雇用主としての責任を負わされる直接雇用でなく、派遣元との契約をいつでも切れる派遣を利用するようになりました。使用者にとって、同じ非正規雇用でも、直接雇用と間接雇用では決定的な違いがあります。
安定雇用といわれますが、直接雇用だから安定し得るのであって、間接雇用では安定はありえません。派遣先(使用者)と派遣元(雇用者)の契約は商取引であって、そこには解雇や雇止めの制限などまったくありません。労働者にとっては不安定極まりなく、使用者にとってはこんな都合の良い制度はないわけです。

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井上国際的には、派遣事業は「職業紹介事業」の一種として扱われています。ILO181号条約でも、派遣業は「民間職業紹介所」の一つと定義されています。働く場所として紹介されるのが派遣先であり、その意味では派遣事業も職業紹介事業も同じです。派遣会社は、労働者を使用して労働力を利用する会社ではありません。その意味では「派遣労働者」という言い方自体もおかしいですね。
……

井上派遣とは「働き方」ではありません。「労働」とは、法律的にも使用者の指揮命令下で労働力を提供することであり、派遣労働も、派遣先の指揮命令下で労働力を提供しているわけです。したがって、派遣を職業紹介事業として位置づけ、一度紹介されて一定期間仕事をしたなら直接雇用される、それを基本的ルールとして考える方が合理的です。無期限の派遣を許して、直接雇用の途を閉ざすなど、不合理極まりないと思います。
……

井上昨日も労働弁護団の幹事会があり、雇用破壊や労働法大改悪とどう闘うか議論をしました。しかし、派遣の問題はどうしても労働組合の動きが鈍い感じがします。労働組合の多くは正社員中心であり、理解しにくいのでしょうが、今回の法改正で正社員が大幅に派遣に置き換えられることを判りやすく訴え、認識してもらうしかありません。今でも正社員が次々に非正規の有期直接雇用に変わっています。それに加えて、正社員が、直接雇用でない派遣に変わっていったらどうなるのでしょうか。派遣は非正規の中でも最も組織化が困難です。労働組合運動にとって重大危機だと考えて欲しい。
正社員の方には、自分の子どもについて考えて欲しい。就活が話題になっていますが、自分の子どもは安定した雇用、正社員にはなれない社会になろうとしている。法改悪をこのまま許したら、新卒で有期契約社員どころか、新卒で派遣社員という人が急速に増えるでしょう。企業は派遣で新卒採用し、その中で一部の人だけが直接雇用になるかもしれませんが、それはあくまでも会社側の選択でしかありません。自分の子どもは自分のような安定した仕事にはつけなくなるとの危機感を労働組合役員にはもっていただき、派遣法大改悪に反対する運動に取り組んでいただきたいと思います。

……

龍井−最近の労働組合役員は、正社員とか安定雇用について、まるで悪いことのように「既得権」だと批判されると、何故か胸をはってそれに反論できません。

井上「既得権」とは、本来、非常に良いことのはずです。労働組合は、闘いによって労働者の権利を獲得し、それを守り発展させることを目的としています。その言葉はプラスイメージのはずなのに、不思議ですね。その大切な権利を否定しようとする側が、まるで悪いことのように「既得権」とのレッテル貼りをやっている。それは、労働者を分断し、労働者どうしで敵対させて、労働者の権利を奪い取ろうとする常とう手段ですよ。

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