ニュース&トピックス | 東京法律事務所

2012年のニュース

事件紹介

福島原発避難者訴訟:福島原発事故によって避難を余儀なくされた住民が、
財物の補償や慰謝料の支払い等を求め福島地裁いわき支部に提訴

福島第一原発事故によって避難を余儀なくされた住民が、東京電力に対して、集団訴訟に踏み切りました。

集団訴訟としては、全国初になります。
弁護団は、福島原発被害弁護団が担当していますが、当事務所からは、笹山尚人、今泉義竜、山添拓が参加しています。

1 訴訟の概要

[福島原発避難者訴訟(裁判所の事件名は,福島原発避難者損害賠償請求事件)]

(1)当事者

原告:18世帯40名(年齢層:3歳から77歳まで)

  • いずれも,福島原発事故当時,避難区域である双葉町,楢葉町,広野町,南相馬市に居住していた住民であり,現在もいわき市のほか福島県内外において避難生活を強いられている。

原告代理人:弁護士 小野寺利孝,同 広田次男,同 米倉勉ほか福島原発被害弁護団の90名の弁護士

被告:東京電力株式会社

裁判所:福島地裁いわき支部


(2)請求額

被告が,原告らが福島原発事故によって被った被害として,合計金19億4367万3194円の賠償金の支払いをせよ。

  • 原告の多くは,当弁護団を通じて東京電力に対する直接請求・集団交渉等を通じて,合意に至らなかった部分を請求している。
  • 世帯別でみると,数千万円の請求が中心。最高額は2億4016万8600円,最少額は1258万1726円。ただし,損害が確定していないものもあり,一部請求である。
  • 賠償請求の内容については後述。

2 訴訟に至った経緯

[事実経過]

2011年 3月11日 東京電力福島原発事故発生→甚大な被害発生

<事故直後から被害者の相談が相次ぐ>

同年夏ころ     弁護団結成に向けた動き

同年10月16日  「福島原発被害弁護団」結成

以後,ほぼ毎週,各地で相談会,弁護団会議を実施

2012年3月7日  東京電力に対する集団直接請求

以降,第4次請求まで実施するとともに,東京電力との交渉を重ねる。

しかし,東京電力は,加害者であるにもかかわらず,自己の定める賠償基準に固執しつづけ,被害者の要求に一切耳を傾けることなく,不誠実な対応に終始してきた。

2012年11月14日 原告団の結成

2012年12月 3日午後1時 提訴(福島地裁いわき支部)

今後,追加提訴を予定(百数十名)



3 損害賠償請求の内容について[生活再建,再出発に必要な賠償を!]

(1)基本的な考え方

一人ひとりの被害者が地域コミュニティから無理やりひきはがされ,人間同士の関係性を断ち切られて孤立し,従来の人間らしい生活とその基盤を根こそぎ奪われ,今後どこに定着して生活したらいいのかの見通しもつかないこと,すなわち全人格的被害を受けている。

 本件事故は公害であり,加害者と被害者は非互換的で,加害行為には利潤性がある。

そのうえで,広範囲の地域において継続的かつ全面的・深刻な被害を引き起こしている。しかも,本件事故による被侵害法益は,人格発達権や平穏生活権であり,これまでの差額説的な考え方で扱われるものではなく,このような権利を充足していた社会的諸条件の効用の回復にこそ損害賠償の目的は据えられるべきである。

→生活再建,再出発を行なうために必要な賠償,原状回復が図られるべきである。


(2)損害賠償請求の項目

A 積極的損害
  避難や避難先での生活のために必要となった実費。
  交渉において東電が認めて支払いを行ったものはあるが,東電が認めなかったものなどについて請求。


B 休業・逸失利益の賠償


C 財物賠償

  • 警戒区域及び計画的避難区域として指定された地域,またそれに準じる地域については政府による区域の変更,立ち入り制限の程度に拘わらず,向こう5年間以上の間は生活基盤としての価値を全面的に喪失した。→時価ではなく,再取得価格を請求する。

[土地]

  • 少なくとも全国平均値としての土地購入価格として,住宅金融支援機構「平成23年度フラット35利用者調査報告」による土地付き注文住宅利用者の土地取得費の全国平均額である金13,688,000円を基本とした。

[建物]

  • 少なくとも全国平均値での建物購入価格とし,減価償却は考慮されるべきではないとの考え方から,土地と同様にフラット35の統計データに基づくと,住宅建設費の全国平均値は金22,380,000円(住宅面積の平均値は115.3?)であり,この額を最低限の賠償価格とした。

[その他]

  • 今回の請求額は,自宅不動産を含むが,農地や事業用不動産を含んでいない(今後請求を拡張する予定)。

D 避難に伴う慰謝料
  避難生活が終了するまで,一人につき月額50万円の請求する。


E ふるさとを喪失したことに対する慰謝料
  かつての自宅,また自宅のあった地域社会そのものを喪失したことに対する慰謝料として,
  一人につき,金2000万円の請求する。


<弁護団連絡先>
〒110-0015  東京都台東区東上野3丁目28番4号 東上野スカイハイツ504号
       福島原発被害弁護団
        共同代表 弁護士 小 野 寺  利  孝
        共同代表 弁護士 広   田  次  男




PAGE TOPPAGE TOP

ご相談のご予約は、予約申し込みフォームまたはお電話でお申し込み下さい
お気軽にお電話ください03-3355-0611
予約申し込みフォームへ
スマホサイトを表示